おこもりハワイアン音楽②

ハワイで最も気持ちいい時間は朝だ。
自然に囲まれた静かなコテージで目覚めれば、それだけでハワイに来た甲斐がある。
ほかに何もしなくてもかまわない。
あのハワイの朝だけが持つ特別な澄んだ空気はなんだろう。

そんなハワイの朝の空気が感じられるハワイアンミュージックをいくつかご紹介。
サブジャンルとしては・・ソロボーカリスト女性編かな。

②朝に聞きたいハワイアンミュージック

まずはローナ・リムの『ポリナヘ』。
このアルバムはハワイで賞も取っているし、ハワイ観光局でも使われたので、
日本でもハワイ通にはそこそこ知られているかもしれない。

Polinahe
Lorna Lim

やさしいボーカルのゆったりした曲調で心地よさ満点。
1曲目のWailauを聞くと、あのハワイの朝の光景が瞬時にまわりに立ち上ってくる感じがする。
女性のやわらかな声が、起きぬけのぼやーんとした体をやさしく包んでくれる。
だけどその辺のカフェ系癒やしミュージックとはぜんぜん違うのだ。
ローナはハワイ島のクムフラ(フラを教える人)であり有名なフラファミリーの一員なので、
ハワイの伝統音楽がベースをしっかりと支えている。
それでいてマニアックなフラっぽさを感じさせず、ハワイアンをあまり知らない人でも
楽しめる一枚になっているのが、このCDのすごさだと思う。
フラの定番の曲もたくさん入っているのだけど、アレンジの感じや彼女の歌の雰囲気のせいで
古臭くない感じの仕上がりになっているのもいい。ハワイ島テーマの選曲が多いので、
ネイバーアイランドのコテージバカンスによく合うんじゃないかな。

ここでハワイアンミュージック初心者の方のためにひとつうんちくを。
ハワイアンミュージックは、定番の曲というものが膨大にあって、
どんな有名ミュージシャンでも必ず何かしらの伝統的な曲を演奏する。
ジャズのスタンダードナンバーみたいなもの?といえばいいだろうか。
だからオリジナル曲だけで構成されているアルバムというのは本当に少ない。
とはいえ別にそれが悪いわけではなく、ハワイアンミュージックの予定調和的な楽しさでもある。
古い曲を現代的なアレンジでいろんなミュージシャンが演奏するのも新たな魅力発見!という感じだし、
定番曲そのものも年々増えているので、伝統音楽でありながら古臭くはならないのだと思う。
(「なだそうそう」も定番曲のひとつに入っちゃってるよね)

次のおすすめアルバムは、めずらしく日本から。

Bossa hula nova
小野リサ

これは名盤中の名盤で、私の長年のお気に入り上位アルバムでもある。
特にハワイに詳しそうでもない小野リサが歌うフラの名曲を集めたアルバムなのだが、
この彼女のボサノバとハワイアンの相性のよさといったら!
「ブルーハワイ」だの「アロハオエ」だの「カイマナヒラ」だのかなりベタな選曲もあるのに、
アレンジや声のおかげでさわやかでスタイリッシュな雰囲気に。
うーん、久しぶりに聞いてもやっぱりいい。
よく見るとオアフ島テーマの選曲が多めで、なんとなくホノルルのスタイリッシュな
リゾートという雰囲気が感じられる。
日暮れ時にしっとり聞いてもいいかもしれないが、
やっぱりこのかすれたようなやさしい小野リサの声は、朝の起き抜けに聞きたいな、うん。

ここでもうひとつハワイアンミュージックうんちく。
基本的に定番系のハワイアンミュージックは、ハワイのある固有の土地の自然について歌っている。
というか自然にからめて愛を歌うのが定型なのだ(現代的な曲は違うのもあるけれど)。
だから、どの曲にも舞台やテーマとなる実在の場所がある。
だから、ハワイのどこかへ観光に行くのであれば、
その土地のことを歌った曲を集めて聴いてみるのも、
気分が盛り上がっていいんじゃないだろうか。
ハワイ島のヒロやマウイ島のハナなどの曲は死ぬほどある。
ちなみにカイマナヒラはワイキキからもよく見えるダイヤモンドヘッドのこと。

なんとなく女性ボーカルが続いたので、次も女性ボーカルで続けてみる。

Hanaialii
Amy Hanaialii Gilliom

エイミー・ハナイアリイはマウイ島生まれのローカルで、
フラやハワイアンミュージックに囲まれて育った人なのだが、
音楽的な素養はジャズやクラシック、ポップスなど幅広い。
インタビューしたときに本人から聞いたが、本土の学校で音楽を専門的に学んだそうだ。

ベテランシンガーなのでかなりたくさんのアルバムを出しているのだが、
その中でもこの古いアルバムを選んだのは「KHBC」が入っているから。
エイミーが歌うKHBCって懐かしすぎるでしょ
(昔は十八番っぽかったけど、最近ではあまり歌わないと本人が言っていた)。
KHBCはハワイ島にできたラジオ局のことを歌っている、ちょっとユニークなフラソング
(ラジオが珍しかった時代の話なんでしょうね)。
踊りの途中に、ラジオのチャンネルを回すような振りが入ったりする軽快な楽しい曲だ。
「ウラライホー♪」なんて掛け声もあって気分あがる!って感じなので、
朝の始まりに聞いたら元気が出そうということで選んでみた。

ちなみにこのアルバムでコラボしているウィリー・Kは、
今ではルックスがすっかりアンクル化していて、
ハワイアンミュージック界の重鎮として
若いミュージシャンにものすごく尊敬されている(時は流れた)。

エイミーは基本的にはハワイアンミュージックを中心に活動しているけれど、
東京のコットンクラブでライブをするときなんかは
ジャズ多めで大人のムードたっぷりのステージを見せてくれる。
コットンクラブにはいつもスラックキー・ギターの名手のジェフ・ピーターソンと一緒に来ていて、
この2人の組み合わせがとてもいい。
ジェフもハワイアンだけでなく、ジャズやクラッシックもこなすオールラウンドプレイヤーだから
相性がいいのだろう。ほぼ毎年(だいたい冬)開催されている東京のコットンクラブでのライブは、
観客もフラ色が薄くて一般人も入りやすいので、
ハワイアンミュージック初心者にぜひおすすめしたい。

エイミーがジェフ・ピーターソンやシリル・パヒヌイなどの
スラックキー・ギターの名手たちとコラボしたアルバムもある。

Amy Hanaiali’i & Slack Key Masters Of Hawai’i
Amy Hanaialii Gilliom

そんなところで、今回は朝に聞きたいハワイアンミュージック、女性ボーカル編でした。