フラと相撲は似ている

相撲関連のトラブルがまだ続いている。
テレビのニュースを見ていて感じるのは、
相撲界が抱える問題点がフラ(ダンス)のそれと
ちょっと似ているということだ。

フラも神事から始まった歴史ある伝統文化。
一時期は衰退して、携わる人も少なくなっていたが
外国人である日本人が盛り上げたことにより息を吹き返した。

日本人の立場が逆だが、状況は相撲と似ていると思うのだ。
だから長年、フラ業界を見てきた私には。
相撲問題の根深さがなんとなくわかる。

伝統文化を外国人がやって、
しかもその勢力が本家を上回るというのは
相当にやっかいなことなのだ。

ハワイはアメリカに併合された後、
ハワイ語などの独自の文化が禁止されていた時期がある。
そのためフラは近年まで衰退していた。
それが現在のように復活したのは
1970年代から始まった
ハワイアン文化復興運動によるものだが
もう一つの要因は日本人のフラ愛好家たちの存在だ。
1980年頃から日本では大きなフラブームが起こり、
多い時には50万人ものフラ愛好家がいたともいわれる。

そのことがハワイに与えた影響は大きかった。
フェスや競技大会が盛んになり、
ハワイのフラダンサーも増えた。
フラを教えるクムフラ(フラ教師)も増えた。

が、こうしたいい影響ばかりではない。
実はさまざまな問題も生まれてしまっている。

日本人は根が真面目だから
多くの人はフラを伝統文化として学んでいるのだが
なかにはあまり理解していない人もいて、
物議をかもすような行動をしてしまったのだ。
例えばこんなこと。

現地の人の踊りを勝手にコピーして
人に教えたり、ステージで披露したりする。

古典フラを自己流の作法で踊ってしまう。

誰の許可もなくクムフラを名乗って
ハラウを開いてフラを教える

3つめの何がいけないのか、わかりにくいと思うが
フラは日本の家元制度によく似ており
クムフラというフラ教師の免許的なものは
師匠からしかもらえない。
その許可があってはじめて
ハラウという名の教室で教えられるのだ。
(ハワイのクムフラたちは日本人が
勝手にフラの「センセイ」を名乗り、
日本の「フラスタジオ」で教えることには
目をつぶっている)

フラには決まり事やタブーがいっぱいある。
ハワイの民族アイデンティティにつながる文化だから
単なるダンスとして好きなように踊るわけにはいかない。
そのあたりのフラの精神面が
外国人である日本人にはやっぱり
芯からは理解できないところがある。
相撲道や国技という概念が日本人以外の人に
ピンとこないのと同様だろう。

そしてこの問題をさらに複雑にしているのはお金だ。
ハワイのフラ界が日本人ダンサーのお金に
頼っている面が大きいため
現地の人もそう厳しいことが言えなかったりする。
なかには原理主義のクムフラたちと違い
厳密にいえばルールと異なることをビジネス的に
ゆるやかに認めるクムフラさえでてきた。
(直営店形式ではなく、フランチャイズ形式
で日本のハラウを持つとか)
これがまた混乱のもとなのだ。

フラにしても相撲しても、こうした問題が
短期間ですっきり方がつくことはないだろう。
文化そのものの存在をゆるがすような変化は避けつつも、
時代に合わせて変えられるところは変えていく、
というくらいだろうか、最善の道は。
当たり前の意見だけど。

フラと相撲の両方を知っているハワイの元力士たちは
こうした問題、どう思っているのだろう。
知りたいところだ。